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看護がしたくてもできなかった私がやっと巡り合えた患者さんやご家族、職員を大切にする職場

訪問看護師 才木勝子

私が看護師になったのは、母親が看護師だったことが影響していると思います。母親が話してくれた話を聞いているうちに漠然と看護師になろうとしていました。父親が入院した時に、寂しがっている私に声を掛けて、遊んでくれた看護師さんが母親の話とつながったと思います。看護師になると、現実は違いました。私は、患者さんやご家族の想いに寄り添う看護師になりたいと思っていましたが、以前働いていた病院では、業務に明け暮れて疲れ切っていました。患者さんやご家族を大切にしない、職員を大切にしない・・・そんなことが続き、追い詰められた私は、様々な職場を転々としました。この病院と巡り合って、私の看護師生活は一転しました。この病院は、患者さんやご家族はもとより、職員を大切にする風土があります。スタッフが困っていると、誰かが助けてくれる、患者さんにとって必要なことをすることが認められているし、誰も責めないといった当たり前のこと、しかし、最も大切なことが日常としてあります。

大切にしていることは、どうすればできるかを考え諦めないこと、プラスの言葉で会話すること

この病院で働いて10年、そして、訪問看護師になって8年が経ちます。訪問看護の魅力は、人に寄り添えるやりがいだと思います。利用者さんの自宅に訪問するので、病院とは違い、様々な制限が少ないので決められた時間の訪問の中で、利用者さんに何が適しているのかを考えながら看護ができるのが楽しいです。最も大切にしていることは、すべてにおいて諦めないことです。「これは、無理ですね」ではなく、どうすればできるかを考えるようにしています。もちろんできないこともありますが、できること・できないことを分けて考えて、利用者さんと一緒に考え、私は叶えるための方策を探し、工夫をするようにしています。そして、会話をする際に、プラスの言葉で返すようにしています。そんな風に関わっていくと嬉しいこともたくさんあり、利用者さんから元気を頂いています。「これ、教えてくれたようにやってみたよ」と言って喜んでもらったり、介護サービス全てを拒否していた人が「待ってたよ」と言ってくれるようになったり、有難いことだと感じています。

楽しい仕事が元々あるのではなく、創意工夫して、喜ばれることで実感できる楽しい仕事

時には、心を開いてくれない利用者さんもいます。例えば、そういう人と関わる際には、私服で伺い、おうちの庭の話題をしたりして、無理に医療的な話題をせずに、信用を得ることを第一に考えます。徐々に、「困っていることはないですか」、「爪を切らせてもらえる」とちょっとした関りを積み重ねることで、心を開いてもらえるようになります。看護は、一人ではできないので、利用者さんと共に歩むためにも、信用されること、心を開いてもらえることが大切だと思います。高齢の認知症の利用者さんと関わる時も、決して否定的な言葉は言いません。極端な話、仮に私を「先輩」と認識されたら、私はその方の「先輩」になります。看護師は女優です。利用者さんを元気したいという想いを大切にして、これから先も訪問看護という仕事に関わりたいと思います。楽しい仕事が元々あるのではなく、自分で創意工夫して、喜ばれることで楽しい仕事を実感できるようになると思います。後輩たちにそんなことも伝えながら、私もまだまだ謙虚な姿勢で、成長していきたいと思います。