皆さん、こんにちは。病棟看護師の吉田です。
お寺の住職で90才代のgenshinさんが、誤嚥性肺炎で入院してきました。発熱と咳症状があり、食欲が低下していました。
入院当初からせん妄症状が見られていました。genshinさんへの肺炎治療、補水、栄養補給、環境整備、離床、ナラティブコミュニケーションのケアが始まりました。
genshinさんは、体がしんどい時でも紙と鉛筆を持ち、書き物をしていました。普段の暮らしぶりがうかがえました。
私がgenshinさんに「具合はいかがですか?」と尋ねるとgenshinさんから「歌を歌っています」と返事がありました。私が「歌われるのは、俳句ですか?和歌ですか?」と聞くと「和歌ですよ」とバインダーの紙をペラペラとめくり、詠まれた和歌を紹介してくれました。
『研修会 トラパラたのし 香花に満つ 感謝の道を 笑顔笑顔で』と詠まれていました。
そして、私の質問に一つ一つ丁寧にこたえ、「ものを書くときは辞書を引きなさい。それがためになるのです」とも教えてくださり、和歌に込めたお気持ちを話してくれました。
またちがう日には、genshinさんの近くに私を招き、紙に『人生百話』と記し「人生百話を書くことを目標にしている」と話されました。
genshinさんは、しだいに炎症症状が改善し、食欲も出て、安眠ができ、意識がしっかりしてきました。ほんとうに良かった。
どう生きるべきか
ある日、体調が整いつつあるgenshinさんに「具合はどうですか?人生百話を書かれるのですね」と声をかけると、genshinさんはしっかりとした口調で「70、80を過ぎると体力が落ちる。同時に気力も落ちます。どう生きるべきかと悩んでいます。妻とは延命はしないと話しています。孫たちといい時間を過ごして。人は生れるときも死ぬときも一人、死ぬときには誰の世話になろうかとも思う。どう生きるべきか...」と話すのです。
私は思わず、「げんしんさんらしゅう生きてください」と言っていました。gsnshinさんは私をじっと見て、はっとしたように「吉田さん、よう言うてくれた、自分らしく」とつぶやきました。
私はgenshinさんに感謝の気持ちを伝えたい一心で「げんしんさんのお話しを聴きたい方は大勢いらっしゃると思うわ」と言い、genshinさんは納得したように「ありがとう、ありがとう」と繰り返されました。
これからもgenshinさんのお話とお話しされる姿から愛と知恵をいただきます。