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子育て中、友人に誘われて看護助手の仕事に

看護助手 坂井 弥生さん

 普通科高校を卒業してからはしばらくアルバイトをしていました。それから結婚して2人目の子どもが生まれたころ、友人が吉川病院で看護助手をしていたのです。もともと看護師さんにあこがれた時期があったので、その話を聞いているうちに、私も病院に勤められたらいいなぁと思いました。しかも、こちらの病院なら家から近く託児所もあります。そこでパート勤務で私も看護助手として働き始めました。もう今から15年ほど前のことです。パートで9年、正職員になって6年目です。その間に3人目の子どもが生まれて上の子はもう21歳、いちばん下の子も8歳になります。

未経験だったから最初は患者さんに触れるのも怖かった

 私は仕事をするまで高齢者と同居もしたことがなかったので「自分にできるかなぁ」と心配していました。最初は患者さんに触れるのも怖かったくらいです。当時の私には自分に対して少しネガティブなところがありました。でも周りの人にいつもいろいろ助けてもらってだんだん自信がついてきました。
 私の父が亡くなったのはもう10年ほど前になります。急逝したこともあって看取りができませんでした。それ以来、父親と同じくらいの患者さんがおられると父親のことを思い出します。手を握ったり背中をさすったり、自分ができることで、患者さんが喜んでくれることがあるのがうれしいです。今年の春に認知症の患者さんの車イスを押して外に散歩に出ました。コロナ禍で奥さまとも会えずときどき届くハガキを楽しみにされている方です。桜を見上げてしみじみと「ここはいいところだなぁ」とおっしゃったのです。その一言が心にしみました。私のほうが患者さんに癒されているのだなぁと思いました。

今は介護実務者研修を受講中。来年は国家資格を目指す

 高校までは勉強があまり好きではありませんでした。でもこの仕事をしていると自分のしていることにどんな根拠や効果があるのか興味がわいてきたのです。今は「介護実務者研修」を受けています。今まで知らなかったことを知るって楽しいですね。同じ認知症の患者さんを見ていても知識が増えると見え方が変わってきます。知識をもって介護をすることでさらに自分の行動に価値が生まれるのだと知りました。じつはこれまで「自分には資格もないから」と思って逃げてきたところがあったのです。でも「それではダメなんだ」と思いはじめて「もっと自分に自信を持ちたい。研修を受けたり資格が取れたら、今よりも患者さんにできることが増えるのではないか」と思えてきてチャレンジしようと決めました。上司や同僚が応援してくれるのも心強いです。
 私は洗髪や手浴、足浴などのケアをするのが好きなのですが、先日、洗髪を終えた患者さんがご家族に嬉しそうな声で電話をかけておられたのです。するとその電話を受けたご家族の方の嬉しそうな声も電話を通して聞こえてきました。私たちの行うケア一つひとつがそういう喜びの声につながるのだと思うとまたやる気が出てきます。