皆さん、こんにちは。病棟看護師の吉田です。
認知症の高齢者で男性のshinziさんが入院してきました。奥さんと2人暮らしでしたが、ほぼ寝たきりで食欲も低下しており在宅介護困難となっていました。
入院時に、娘さんが「父は、母が台所にいる間に裸足で外に出て県道を渡り、道向かいの側溝に落ちていた事があるんです。普段全く動かないのにですよ。歩いたんです。」と話しました。
私は「きっとお母さんを探しに出たのでしょうね。」と話した事を思い出します。
shinziさんは、車椅子生活で少しはお話もしていましたが、しだいに衰弱して声も出なくなり、寝たきりなっていました。ある日、呼吸不全を起こしました。いつも娘さんと一緒に面会に来ていた奥さんが、その日は杖をついて1人で来られたのです。私はすぐに椅子を用意して、奥さんに座るように勧めました。
すると奥さんが、私に言うのです。「この人の顔も知らずにお嫁に来たんですよ。その時、
お母さん(お姑さん)が床についていて、この人も介抱してたね。本当に苦労でした。」と、shinziさんの視線をチラリと感じて、私は「shinziさん、聞いてらっしゃるね」と声をかけましたが、他にも苦労話しが続くのです。まるで、ちょっと立ち話しをするかのように。
奥さんは話し終ると、shinziさんにぐっと近寄り「shinziさん、長生きできて良かったですね。」と声をかけたのです。そして私に向かって「お忙しいのにありがとう」と言って、椅子に座られました。
私は、病室がお家の畳の風景になるのを見たような気持ちになりました。
ご夫婦の物語をお話ししてくださって有り難うございます。
スタッフの今夢中