「ここ座りぃ」「食べぇ」

　皆さん、こんにちは。病棟看護師の吉田です。
　８月の絆カフェひなたぼっこ（認知症カフェ）でのとびきり嬉しいおもてなしのお話です。
　masuraoさんは、いつも奥さんのkazumiさんと絆カフェひなたぼっこに来ている方です。
　masuraoさんに初めて出会ったときの印象は、言葉数が少なく、わからないことがちょくちょくあってkazumiさんに尋ねているといった様子でした。絆カフェひなたぼっこの回数を重ねていますが、毎回『はじめまして』のあいさつで始まります。
　８月の絆カフェひなたぼっこでは盆踊りをみんなで輪踊りしたのですが、masuraoさんは「なんや？盆踊り？昔はしたけど、もうわからん」と言い、日本手ぬぐいでの祭り鉢巻も「なんやそれ、鉢巻か？いらんいらん」と話し、輪に入ろうとしませんでした。
　私は「よいよい、わからんねぇ、私といっしょにいよう」とずっとそばに居ました。masuraoさんは、自分のお爺さんが吉川音頭を唄っていて、自分が集会所へ軽四で送っていた事を何度も話してくれました。お爺さんの声はいい声だったと誇らしげでした。
　しばらくして私が、ひょいっと祭り鉢巻をmasuraoさんの頭に巻くと、masuraoさんはまんざらでもない様子でしたが、「結んだか？」と私に聞きながら鉢巻を外してしまいました。その途端に手ぬぐいを伸ばして手際よく自分の頭に巻いたのです。「こうしてなぁ」と結びをせずに、捻って巻きに挟み込んでいました。その後、二人でお手本を見ながらぎこちなく踊りました。笑笑
　踊りが終わってから、お茶タイムのためのテーブルを私が運ぼうとしていると、masuraoさんがそっと来て向こう端のテーブルを持っていました。「ありがとう、手伝ってくれるのね」と私。
　そしてmasuraoさんは、椅子を動かして「ここ座りぃ」と私の席を用意してくれました。お茶タイムには、「食べぇ」とクッキーを割って渡してくれました。
　masuraoさんの優しさとおもてなしを受けて、私の心はほくほくになりました。
　masuraoさん、kazumiさん、これからも絆カフェひなたぼっこでお会いできるのを楽しみにしています。