皆さん、こんにちは。病棟看護師の吉田です。
皆さんの思い出の料理は何ですか?
コロナ禍に80才代男性のchiakiさんが入院してきました。chiakiさんは、脳梗塞を発症し、咀嚼嚥下機能が低下して誤嚥性肺炎を繰り返していたため、栄養管理は経管栄養になっていました。会話はできますが、治療が理解できず認知機能の低下もありました。
私は「chiakiさん、食べたいものはありませんか?」とよく声をかけていましたが、chiakiさんはきまって「ぎょうざ」と、にこにこして言うのです。また、いつもお話やお世話の後には「ありがとう」と言ってくれるのです。建築業の現場仕事だったことも話してくれました。
息子さんにchiakiさんとの会話や様子を伝えると、「想像つかない!家ではほとんど話さない厳しい親父でしたから。仕事終わりに仲間と中華を食べに行っていました。」と教えてくれました。餃子は楽しく美味しく食べていた思い出の料理だったのですね。
chiakiさんに味覚を楽しむケアが始まりました。そんなある日、息子さんからchiakiさんにラムネの差し入れが届きました。“ラムネだったら口にすると溶けるから”と色々考えて選んだようでした。
ラムネを一粒口にしたchiakiさんは、顔をしかめて「これはもういい」と断りました。それを息子さんに伝えると笑っていました(笑笑)。
数日して、chiakiさんにもう一度ラムネを差し出すと「いらん」と言いましたが、私が「息子さんが一生懸命にchiakiさんの食べられるものを探したみたいよ」と言うと「そう、食べよか」と一粒ずつ何粒かおかわりをしました。今度も息子さんに伝えるとやはり笑って聞いていました(微笑)。
コロナ禍で面会制限の厳しい中、息子さんとchiakiさんの優しい気持ちの橋渡しができたでしょうか、ラムネも思い出のおやつになったでしょうか。
私は、餃子をむすぶたびに、ラムネを見るたびにchiakiさんと息子さんを思い出します。あたたかい思い出に感謝しています。
公開日
餃子
スタッフの今夢中