皆さん、こんにちは。病棟看護師の吉田です。
長期療養中の90才代女性sakikoさんは、とても難聴で腰も曲がっています。毎朝、病室へ挨拶に行くと、決まって両手で私の手を握って「今日もよろしくねぇ~」と言うのです。
sakikoさんはいつも、さまざまな意思を私たちに伝えていました。中には、腰に湿布を貼るのは「4時ぴったりに貼ってほしい」とか、身体を清拭するのは「部屋の中で1番にしてほしい」とか、ちょっぴり困ったこだわりもありました。
マイペースに過ごしていたsakikoさんですが、おトイレの失敗が増えてきて、調べてみると大病が見つかりました。何度も綿パンツを履き替えなくてはならなくなり、足元もふらつくようになりました。しかしsakikoさんは、オムツを履くこともポータブルトイレを使うことも拒み続けました。私たちは、sakikoさんが願う排泄ができるようにと、sakikoさんと相談しながら工夫を続けました。sakikoさんは、しだいに歩けなくなり、ポータブルトイレを使うようになりました。そして、ポータブルトイレに座っていることができなくなり、オムツを履くことになりました。その頃には、痛みや吐き気がでてきたので、その症状を緩和する治療とケアへと移行していったのです。うつらうつらと眠ることが増えたsakikoさんですが、目が覚めたときには、私たちを手招きして、「お尻、きれいにしてねぇ~」「ご飯ないの、食べたい」と言うのです。洗浄のお世話をすると「きれいになった?汚いことごめんねぇ~、ありがとうねぇ~」と言ってまた眠ります。
食べたい思いにも、家族はおむすびを握って差し入れたり、病棟では補食ジュースやパン・おじやなど、sakikoさんが口ずさんだ食べ物を用意して、ほんの少し口にできたこともありました。
ある日、眠っていることがほとんどで話さなくなっていたsakikoさんが、Mナースの訪室時に「何か食べるもの」と言い、Mナースは小さなパンを1個sakikoさんに手渡しました。Mナースが見守る中sakikoさんは、自分でパンを持ち、小さくちぎって口にし、しばらく噛んでから飲み込まずに出したのです。「パンおいといてねぇ~」「パン、ここに置いときますね」とパンが置いてありました。その話を聞いた私はすぐにsakikoさんのもとへいきました。sakikoさんは両手を出して、「親切にしてもらって、ありがとうねぇ~。パン置いてもらってる」と私の手を握って微笑んでいました。
sakikoさんの思いに応えられないこともあったでしょう。それでも、sakikoさんの思いに応えようと看護をし続けたスタッフたちと、励まし続けたご家族に感謝します。

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