あなたに褒めて頂きたくて

　皆さん、こんにちは。病棟看護師の吉田です。
　桜満開のお花見を、患者さんたちはしていました。どの方も満足気に見ていました。「さまざまの 事おもひ出す 桜かな」皆さん、重ねた年だけ桜を見てきたことでしょう。
　先日、長野の娘さんの所へ退院した80歳代のkeikoさんは、今春はどんな桜を見たでしょうね。keikoさんは、田舎の広いご自宅での独居生活を望んでいましたが、娘さんたちの母への心配もあり、桜の季節に長野に住まうことになったのです。keikoさんは、マイペースにリハビリを頑張って歩行も安定し、毎日病棟内を歩いていました。患者さん同士のお友達もできて、お喋りやパズルゲームや塗り絵をして過ごしていました。
　ある日私は、退院が決まったkeikoさんに、廊下で出会った時に「ちょっといいかしら」とkeikoさんの病室に案内されました。keikoさんはゴソゴソと床頭台の中から塗り終わった塗り絵を出してきて、私に見せたのです。塗り絵はお花ばかりを選んでありました。

吉田　　　「これはクロッカスですね、季節ですね」
keikoさん「そうなんです」
吉田　　　「これはしょうぶですね、上手ですね」
keikoさん「違います、あやめです」
吉田　　　「そうでしたか、綺麗です」
吉田　　　「これはポピーですね、可愛い」
keikoさん「コスモスですよ」
吉田　　　「風景が春ですよ」
keikoさん「まあ、ほんとですね」
吉田　　　「魔法の絵ですね、春はポピー、秋はコスモスになりますよ」
keikoさん「そうでしょうか」笑笑笑笑
吉田　　　「これはチューリップとデイジーですね、春らしいです、彩りが良いですね」
微笑　keikoさん「あなたに褒めて頂きたくて」
吉田　　　「えっ、私に」
keikoさん「そうです、あなたに」
吉田　　　「なんだか私も褒められたようでうれしい」（笑み）

　keikoさんは、なんてさりげないお礼の気持ちを伝えてくれたのでしょう。
　先日、花屋であやめを見つけたので、さっそく庭に植えました。桜見て思い出すkeikoさんとあやめのご縁に感謝です。