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お家へ帰ろう 「ほんとぅ、うれしい」

 皆さん、こんにちは。病棟看護師の吉田です。
 災害大国と言われる日本ですが、年明けに大きな自然災害と人災にみまわれました。
 私は、紛争や災害のニュースを見るたびに、やるせない気持ちでいっぱいになるのです。
 96才の女性hideさんが、大腿骨転子部骨折術後で入院しています。術後なのにずいぶんと腰を痛がるため調べてみると、腰椎椎体骨折を併発していたのです。術後せん妄既往や年齢を考慮して、コルセットでの対症療法を選択しました。離床への予後は不良となります。また、hideさんはとても食が細く栄養管理も難しい状況です。
 入院前より、hideさんのご家族keikoさん(娘さん)katuyukiさん(娘婿さん) amuさんrenaさん(お孫さん)は、hideさんと家でともに暮らすことを望まれていました。
hideさんの疼痛は和らぎましたが、食は相変わらずです。私はhideさんに「腰の骨が折れちゃったね、痛かったでしょう」と声をかけ、hideさんは「よろしくおねがいします」といつも病床から手を伸ばします。「はい、お世話しますね」と会話は続くのです。
 ある日、いつものように手を伸ばしてくれたhideさんの手を握ると、hideさんが「あたたかい手」と言って両手で私の手を包んでくれました。私は思わず「そうぅ、ありがとう」と返事をしていました。なんと安堵した気持ちになったでしょう。お世話してもらっているのはわたしの方でした。
 またスタッフたちが、hideさんとの会話の様子を嬉しそうに話す姿も幾度となく見ました。
 ご家族との会話の中でhideさんのことを、katuyukiさんが「彼女はとてもプライドが高い」と尊敬して話してくれた事、keikoさんが「母はいつも自分で決めている」と誇りに思って話してくれた事、amuさんとrenaさんが家に帰ろうと伝えた時、hideさんの「ほんとぅ、うれしい」という返事を、笑顔で話してくれた事がよくわかりました。 
 hideさんは、率直で自立した包容力のある女性で母でおばあちゃんなのですね。
 私もhideさんのように優しく包めるといいなあ。

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