皆さん、こんにちは。病棟看護師の吉田です。
田舎でひとり暮らしをしていて、難聴の80才代女性utakoさんが転院してきました。
utakoさんはよく転びます。骨折しては入院治療をし、入院しては帰宅願望がでて、家族は心配していたようです。今回も転んで右手を骨折し入院となっていました。入院中に認知機能の低下とBPSDも起こしたようです。骨折は治りましたが、ひとり暮らしは難しく、息子さんの近くの当院に転院してきました。utakoさんは転院当日、とても緊張した表情で困ったように何度も何度も息子さんの方を見る姿がありました。私は名札を見せて「吉田です」と、声をかけるたびに自己紹介をしていました。
翌朝、utakoさんは車椅子に座り、介護スタッフに押してもらっていました。出勤したばかりの私は、utakoさんの前にしゃがみ、名札を見せて、「うたこさん、おはようございます。吉田です。」と声をかけました。utakoさんは、「吉田さん。おはようございます。」と、まだ少し困り顔でした。様子を見ていると、utakoさんはずっと車椅子に座っていて、スタッフたちが、入れ替わり立ち替わり車椅子を押していました。
昼食後、スタッフたちが昼休憩の頃、フロアには他の患者さんとutakoさんの二人がいました。utakoさんの大きな声が聞こえたので行ってみると、何か居心地が悪いのでしょうか、「ここはええ、ここはええ、」と言うのです。utakoさんに、ナースステーションの看護記録をしている私の隣にきてもらいました。名札を見せて、「うたこさん、こんにちは。吉田です。」と声をかけると、utakoさんは、名札を触りながら私を見て、「吉田さん。出会えて嬉しい。わたし、もうとしやで、」と、私の左腕をずっとさすっていました。そして、私の桜の髪留めを褒めながら頭を撫でてくれました。お話をしていてしばらくすると、utakoさんが私に何度も言うのです。「無理すんな、」「無理すんな、健康が一番。」と心配してくれるのです。
午後からutakoさんは、介護スタッフと満開の桜の花見に行っていました。
夕刻、何やら大きな話し声がするので聞き耳をたてていると、utakoさんがフロアで、一緒に居る患者さんたちに、「田舎暮らしでも心は豊か」と、自分の故郷と暮らしぶりを話していたのです。私は、utakoさんらしさがちょっぴり知れて嬉しい気分になりました。
utakoさんの話す回想はあたたかい気分になります。これからもいっぱい故郷のお話をきかせて下さいね。
毎日の患者さんとの会話で、新しい言葉とか日本の文化を聞いて、それを覚えるのはワクワクして楽しいです。とても勉強になります。