皆さん、こんにちは。病棟看護師の吉田です。
80才代の男性masaoさんは、突然の脳梗塞で左半身麻痺となり施設生活を送っていましたが、食事がすすまず声も出なくなり頷くだけの寝たきり状態で入院してきました。
入院時に息子さんは「食べなくなったのはどうしてか?車椅子にも座っていたのに・・・」「倒れたのが急だったので・・・防災士をしていたんです。」と話し心配されていました。
masaoさんへの摂食介助を始めました。masaoさんは、スプーンを持っても使えず、食べることを数口すると、口をきつく閉じて食べないのです。味を変えたりしてさまざまな工夫をしましたが、食べすすまない日が続きました。そして、経鼻経管栄養をすることになりました。右手は自由に動かせたので認知症マフを使うことにしました。
数ヶ月が過ぎ、masaoさんが経鼻チューブを自分で抜くことが増えてきました。スキンケアやチューブ固定の工夫などとともに認知症マフの使用を続けていましたが、私はしだいにmasaoさんの表情が険しくなっていくのが気になっていました。右手でスタッフを払いのけることもしばしばありました。
そんなある日、masaoさんが大きな声で「なんや!」と怒鳴ったのです。
私は、主治医と病棟スタッフと言語聴覚士に相談して、もう一度経口摂取介助を始めました。一ヶ月もしないうちにmasaoさんは、車椅子に座り自分で食事をするようになりました。表情は優しく、おはよう・こんにちはと挨拶を返してくれることもあり、手を握ってさすってくれるようになったのです。
認知症マフの癒やし・リラックス・ストレス緩和の効果で安心感を得られるはずが、masaoさんにとってはストレスとなっていたのです。私は、目的を間違えてマフを使ったことを大変反省し、masaoさんに申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
それでもmasaoさんは、手を繋いでくれます。先日、masaoさんに手招きされた私が「ごようはなんですか?」と訪ねると、「断水、断水」と言うのです。防災士のmasaoさんなのです。
仕草や表情、言葉を大切にmasaoさんらしく暮らせるお手伝いができればいいなと思います。
masaoさんから『その人らしく』を教わりました。感謝です。
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断水
スタッフの今夢中