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ブラボー拍手喝采

 皆さん、こんにちは。病棟看護師の吉田です。
 大病を患い病状の告知を受けて入院生活をしている80才代男性のmamoruさんは、ときに話した内容や生活中の出来事を忘れてしまうことがあります。
 mamoruさんの奥さん、長男さん、次男さんが、mamoruさんに歌を届けたいと思っていました。長男さんはピアニストで次男さんは声楽を学んでいます。mamoruさん自身も、若い頃にピアノとクラッシックギターを弾いていたと奥さんが話してくれました。
 私は、病院内でずいぶんと前から弾かれることのない埃まみれの古いピアノを病棟に置き、丁寧にお掃除をしました。
 mamoruさんの長男さんと次男さんの演奏が始まりました。次男さんの傍らには車椅子に座ったmamoruさんがいます。フロアにはたくさんの患者さんとご家族とスタッフで30人ほどが聴いています。長男さんの弾く優しい音色と次男さんの父を想う唄声が響きます。

私のことを忘れないで
私の人生はあなたがいるからある
私はよりいっそう君を愛している
私の夢の中には君が残っている
私のことを忘れないで
私の人生はあなたがいるからある
いつも私の心にはあなたのための巣がある
私のことを忘れないで

 “Non ti scordar di me”です。演奏の間、いつも故郷の鹿児島の話をしているsetsukoさんは感激の言葉を呟いていました。演奏が終わると、長崎育ちで19才から大阪に住み事務職をしながらお店でシャンソンを歌っていたsetsukoさんは「ブラボー」と大声で喝采しました。ピアノ講師をしていた娘さんを亡くしたyoshimiさんは涙をこらえて静かに拍手をしていました。会話はたどたどしいけれど歌うのが好きなtoshikoさんは誰よりも先に身を乗り出して拍手喝采しました。フロアが感動に包まれていました。
 mamoruさんは、じっと演奏を聴いていました。演奏が終わってもじっとしていました。私は、mamoruさんの前に行きしゃがみこみました。隣にいる次男さんの、「父に聴かせたくて」という声が聞こえ、mamoruさんの瞳が潤んでいるのを見ました。
 その日の夕刻に私は、mamoruさんを訪ねて「今日は有り難うございました。とても感動しました。」と伝えました。mamoruさんは小さく首を横に振り「わたしは何も、」と応えました。「mamoruさんの息子さんじゃない、みんなが感動しましたよ」と言うと、「ありがとう、ありがとう、」と何度も小さく頷いていました。
 あれから毎日、誰かがピアノを弾いています。流れるようなメロディーの時も、途切れ途切れのメロディーの時も、すべてが心地よい響きになっています。

OT山口さんの夢中

「舟を編む」と言う辞書作りのドラマにハマっていて、その影響で紙の辞書に夢中になっています。
久々に紙の辞書に戻ると、凄いですねー。
楽しすぎて我を忘れます。もうオンライン辞書には戻れないです。