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ストローでちょうだい

 皆さん、こんにちは。病棟看護師の吉田です。
 80才代男性のmasaakiさんは、パーキンソン病を患い誤嚥性肺炎を繰り返すほど嚥下機能が低下して入院してきました。胃瘻からの経管栄養をしています。排痰困難があり入院直後も肺炎を繰り返しました。
 masaakiさんはいつも、「ご飯はまだですか?」「まだご飯をもらっていません」と話します。奥さんと息子さんは入院当初より、masaakiさんがなんとか食べられないかと面会のたびに想いを話してくれました。masaakiさんは、拘縮がすすみ車椅子には座れなくなっています。吸引が必要ですが、排痰援助のために計画的な90度側臥位ドレナージをして、味を楽しむケアを始めました。
奥さんは、喜んで差し入れを考えて、面会に来てはmasaakiさんにスプーンをなめてもらっていました。しかし、masaakiさんは、「ストローでちょうだい」と満足できず、奥さんを帰してしまうこともあったのです。私は息子さんから、「母が面会の帰りに泣いているんです。吉田さんの知恵をかしてください。」と言われたのです。
 私は、コラムの25話で出逢った息子さんの想いを思い出して、masaakiさんの奥さんと息子さんにラムネの話をしました。次の面会で奥さんは、「お店の人に聞いて買ってきました。」とラムネをバッグの中から取り出しました。masaakiさんは、口の中で一粒のラムネを上手にしばらくなめて、「もう一つちょうだい」と満足気でした。それからは、リクライニング車椅子でラジオ体操などのアクティビティに参加する楽しみも増えていきました。奥さんはというと、とてもオシャレに面会に来られるようになり、スタッフたちと話す姿をよく見るようになりました。
 私は、息子さんがお母さんと一緒に面会に来て、少し離れたところから、お母さんとmasaakiさんの様子を見ているところへ、「お母さん、泣かなくなりましたね。よかったですね。」と声をかけました。息子さんは私に、黙って頭を下げてくれました。
 お礼を言わなければならないのは私の方です。頼って下さって有り難うございます。想う大切さと、願う優しさを教えてもらいました。

看護補助者 今井さんの夢中

 古いバイクに乗って、古いカメラで写真を撮るのが好きです。
 このカメラは、90年前の物です。
 現代写真も歴史写真のように仕上がりますよ。